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胃薬は膵炎の原因となる-膵臓は沈黙の臓器!?-

膵臓こそが沈黙の臓器 ?

肝臓が沈黙の臓器といわれる所以は、異常が起きたときの痛みもなく、知らないうちに障害が起きているからです。肝臓に障害が起こっても、中々症状が出てきません。黄疸などの症状が現れてきたときには、既にかなり進行しています。しかしこの肝機能障害は、初期の段階で血液検査により簡単にスクリーニングできるため、健康診断では、必ず血液検査の項目に加えられています。

AST(GOT)とALT(GPT)は肝細胞に含まれている酵素で、少しでも肝細胞が壊れると血液中に出てきますので、これを血液検査で調べることによって肝臓に問題が発生していることが分かります。ところが膵臓は、慢性的な炎症が起こっていても血液検査では知ることができません。日本膵臓学会の早期慢性膵炎の診断基準によると、超音波内視鏡検査(EUS)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)、磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)で診断することになっています。この中ではMRIの装置で膵管を撮影するMRCPで容易に検査ができますので、最近では人間ドックにも取り入れられるようになりました。このような特殊な検査をしないと膵臓の初期の異常は知ることができません。知らないうちに炎症が進んでいる膵臓こそが沈黙の臓器といえるのかもしれません。

膵臓はこの図のように胃のすぐ後ろにあります。膵臓は肝臓と違って、炎症が進むと痛みで知らせてきます。しかしここで問題が発生します。胃の痛みと区別がつきません。「胃が痛い」と言って内科に行けば胃の内視鏡検査をしますが、異常が無ければ「大丈夫です、様子を見ましょう」と言われてしまいます。また内視鏡検査で胃に潰瘍が見つかればそのせいにさせられてしまい、胃薬が出されてしまいます。いずれにしても早期慢性膵炎は見逃されてしまうことになります。痛みが強く背中の方に放散痛があれば急性膵炎を疑い、血液検査で膵酵素の上昇がみられますので簡単に分かります。早期慢性膵炎はMRCP、ERCP、EUS以外に診断方法がありません。

 

慢性膵炎は炎症のため、この図の膵管(Panceatic duct)が拡張しています。高校生物で習いましたが、膵臓はランゲルハンス島でインシュリンを作り、外分泌腺ではアミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなどの消化酵素を作って膵管から十二指腸へ分泌しています。

膵性糖尿病

膵臓の疾患が原因で、インスリン分泌能が低下し、糖尿病を発症した場合を膵性糖尿病といいます。2005年の疫学調査では、膵性糖尿病は、原因は慢性膵炎40.0%、膵癌24.6%、膵切除後10.2%、急性膵炎7.5%、その他となっています。本来であればこの中に早期慢性膵炎も含まれているべきですが、早期慢性膵炎のデータがないため数えられていません。私は相当数の患者がいるものと見ています。

バイ・ディジタル・オーリング・テストは共鳴現象を使って体表にマーキングすることにより、感染部位を特定することができます。赤色の斜線部分が細菌感染の部位です。

膵臓に細菌感染がある場合、有効な抗生物質を投与すると糖尿病が治ることがあります。

胃薬のプロトンポンプ阻害薬(PPI)は細菌増殖の原因

胃から分泌される胃液は、たんぱく質を分解する消化酵素の他に塩酸も含まれていて、食べたものに付いて入ってくる細菌やウイルスを殺菌したり、有害物質を分解する役目もしています。これも高校生物で習いました。PPIは胃酸を止める作用が強力ですので、食べ物に付着した細菌が殺菌されずにそのまま十二指腸まで届いてしまいます。膵臓の膵管はこの十二指腸に開口していますので、ここから膵臓の中へと細菌が入り込むことによって慢性的な炎症が起こることになります。この炎症により、前回のブログで書いた2型糖尿病の原因である“インシュリンを膵臓で分泌する能力の低下”が発生します。

早期の糖尿病であれば抗菌剤で治る

糖尿病の一部は感染症です。インシュリン分泌能低下が原因の早期の糖尿病であれば、抗菌薬で治ります。感染がバクテリアの場合もありますが、真菌やその他の場合もありますので、バイ・ディジタル・オーリング・テストが最も簡便で有効な診断法です。

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