健康保険税を安くするために食肉税を導入するべき
米国の国際食糧政策研究所、英国のオックスフォード・マーティン・スクールとナフィールド人口保健学科での研究結果をMarco Springmann が発表しています。世界150地域のデータを分析し、肉と加工肉(ハム・ソーセージ等)の購入に対して、食肉税を導入すれば、死亡率を9%、医療費を14%減少できる可能性があるとの報告です。
※ここでの肉は牛肉、豚肉、羊肉で、鶏肉と魚肉は除きます。
最適課税レベル
いわゆる最適課税レベルを計算しています。食肉の禁止ではないので、消費者は依然として肉や加工肉を食べることはできますが、肉を食べることが原因となっている治療費を、肉をあまり食べない人にも負わせるのではなく、肉を多く食べる人に治療費の多くを負わせる必要があります。
彼らは肉と加工肉が慢性疾患のリスクにどのように影響するか、そしてそれらを治療するためにいくらかかるかを見積もりました。次に、肉および加工肉に関連する健康および経済的負担を計算し、それに基づいて、食肉税を見積もりました。
IARCは1965年に発足したWHOのがん研究専門組織でヒトへの発がん性評価を行っています。
IRACの2015年の発表にによると、牛・豚・羊などの加工肉は「発がん性がある」、未加工の肉も「おそらく発がん性がある」に分類されており、加工肉はアスベストと同じ発がん物質に分類されています。この結論は、800件を超える疫学調査の分析を、22人の専門家でつくる委員会が審査して得られたもので、結果は『Lancet Oncology』誌で発表されました。分析には、さまざまな国や民族、食生活にわたるデータが含まれているため、「偶然や偏り、混同などで説明されるとは考えにくい」と述べています。これを裏付ける証拠のひとつとして、委員会では2011年のメタ分析結果を引用しています。これは、日常的に摂取する加工肉を50g増やすごとに、ヒトが大腸がんになる相対リスクは18%高くなるとの結論によります。
さらにこの調査では、日常的に摂取する赤肉を100g増やすごとに、人が結腸がんになる相対リスクが17%高くなることもわかっています。大腸がんのほかに、胃がん、すい臓がんや前立腺がんとも相関性があることがわかっています。
2020年には、肉および加工肉の消費による死亡者数が世界全体で240万人、医療関連の費用が2,850億米ドルに達すると推定しています。
高所得国では100%の課税
英国や米国などの高所得国は、肉と加工肉の世界平均の約2倍を消費します。これらの国々はまた、関連する慢性疾患の治療により多くの医療費を費やしています。低所得国は世界平均の半分以下しか消費せず、食肉関連疾患の治療にもより少ない医療費を使います。
この医療費の違いのため、特定地域での肉および加工肉の消費による健康上および経済上の負担を考慮に入れて、食肉税は地域ごとに異なる必要があるとのことです。その結果、彼らが計算した食肉税は、高所得国では高く100%、低所得国では低く1%、これが経済的に最適な税となっています。
我が国でも肉の消費が増えるに従って、生活習慣病や癌が増えてきました。今後は高齢化に伴い、ますます癌が増えていくでしょうから、社会保障費の増大、健康保険税の税額アップは避けられないしょう。発がん物質であるタバコに課税するのと同じく、食肉課税の導入が望まれます。
以前の記事【腸内細菌叢機能を上げるためにPert.4】にも書きましたが、肉は月に2日だけにすることが健康にとって最適だそうです。我が国の国民は戦後の高度経済成長期に入る前までは肉は月に2回程度しか食べていませんでした。
健康のためには牛肉、豚肉、羊肉だけを食べるのでしたら月に2回まで、鶏肉だけを食べるのでしたら月4回まで、鯨肉だけを食べるのでしたら月5回までとのことです。しかし実際はこれを組み合わせるのですから、かなり複雑です。