食糧危機

食糧難に備えよう -中-

スリランカの国家破綻は欧米の「SDGsの罠」

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)2050年近辺までのカーボン・ニュートラルが必要という報告がされています。

地球温暖化対策のためにCO2や亜酸化窒素などの温室効果ガスの排出の「ネット・ゼロ」を目指す。つまり差し引きゼロにするということです。

世界の温室効果ガス(GHG)の内訳

2019年にスリランカの首都コロンボで国連環境計画(UNEP)の国際会議が開かれました。その時、各国が持続可能な窒素管理のためのロードマップを策定し、2030年までに窒素廃棄物を半減することを目指すという「持続可能な窒素管理に関するコロンボ宣言」が取りまとめられました。化学肥料から生じる過剰な窒素は、人類が直面している深刻な汚染リスクの一つであるとして、窒素廃棄物を半減させる取り組みを紹介しています。

化学肥料、農薬を使う慣行農法から有機農法への転換です。スリランカはその手本となろうとしました。

コメの輸出国から輸入国になったスリランカ

スリランカはこの宣言を実行するために、化学肥料や農薬の使用を禁止して、有機農業に切り替えました。スリランカの食料自給率は120%で、2015年のコメの自給率は129.52%ありました。しかし有機農業に切り替えたため、農家在庫がなくなり次第、肥料も農薬も使えなくなり、コメの生産量は前年に比べて43%減少しています。コメに限らず茶やゴムなどの換金作物も打撃を受けました。国連人道問題調整事務所による6月9日付の報告書によると、作物生産量が半分近く減少しています。自国で消費する分のコメも無くなりました。もともと財政赤字だったスリランカは、外貨を稼げなくなり、とうとう倒産です。

ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字をとった言葉で、おもに、投資家が投資先を選定する際に“重視すべき要素”として提唱されたものです。

World Economics ResearchのデータではスリランカのESGスコアは98.1と投資対象としては極めて優秀で、スウェーデンでも96.1、アメリカは58.7でしかありません。スリランカは「ESG投資」を呼び込もうとしましたが、その前に破綻してしまいました。日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も「ESG投資」にちからを入れています。

欧州でも始まったESG政策

オランダでは6月に、2030年までに窒素排出の半減を目指すという政策が発表され、農家は一酸化二窒素、アンモニアの排出を40%削減することが求められることになりました。

窒素は温室効果ガスの一種で、特に肥料や家畜のふんから放出されます。より気候変動や環境に優しい農業経営に切り替えるか、廃業するかを政府に迫られています。農家が廃業した牧草地や農場は政府が買い上げて木を植えて森に戻すそうです。土地の没収もありうるという厳しい政策です。スリランカとは違いこちらは事前の激しいデモが行われています。

やってくる「食糧危機」はこのような政策によるものばかりではありません。

つづく

 

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